理事長 針生英一

日本初の印刷団地として約50年
いま、迫られる業態変革

仙台印刷工業団地協同組合は、昭和38年に日本ではじめての印刷団地として発足し、昭和41年に操業を開始しました。
時はまさに高度経済成長期。過密状態となった市街地での事業拡大が困難になった私たちは、国の支援を受けて仙台市郊外の六丁の目地区に土地を求め、工業団地を整備しました。組合として集団化することで、設備・技術の高度化や人材育成をはじめ、共同受注、金融事業、公害防止の排水処理等さまざまな事業を展開。地元仙台の発展に寄与するとともに、組合各社の経営基盤強化と社員一人ひとりの暮らしの向上に力を注いできました。
しかし近年、印刷業を取り巻く環境は劇的に変化しています。IT技術の進化やデジタルメディアの普及により、印刷物は情報を伝達する「主な手段」から「選択肢の一つ」に位置づけられ、従前どおり「印刷機を回す」ことだけに捉われていては競争力を失うことなるでしょう。私たちは今、まさに業態変革を迫られているのです。

攻めの姿勢から生まれた
「ビジネスデザインセンター」構想

そもそも何のための印刷業なのか、私たちはその原点を見つめ直しました。地域の産業、文化、教育、市民活動等と密接なネットワークを持つことが印刷業最大の強みです。私たちは、それらの事業を支援することではじめて存在する価値がある。その価値を高めるためには、あらゆる情報メディアを駆使し、伝えたいことを効果的に実現するサービスの提供と、自ら仕掛ける「攻め」の姿勢が必要であることを再認識したのです。
平成17年、当組合は東北大学と協働で地域との結びつきを生かした新しいビジネスの方向性を模索していきました。その中で生まれたのが、異なる業種・分野と知恵を出しあいながら新たな価値をつくり出す拠点施設「ビジネスデザインセンター(BDC)」構想。東北六県の中小企業や起業家を、クリエイティブとマーケティングの視点からサポートする“ビジネスソリューション機能”を構築するものです。
拠点化すれば、六丁の目エリアに「人」と「情報」と「相談」が集まり、それら全てがビジネスの種になるでしょう。BDCと組合員各社の総合力で地元企業を支援することで、未来ある印刷団地に生まれ変われるのではないか。そんな思いから、私たちはBDC実現に向けた動きを加速させました。また、平成27年12月に開通する仙台市地下鉄東西線「六丁の目駅」が、印刷団地に隣接して設置されることも大きな後押しとなりました。交通インフラの充実で、市街地と変わらない利便性を得られる、このチャンスを何としても生かそうと決意を固めたのです。

仙台印刷工業団地協同組合

「FLight」と「創業スクエア」二本柱で
地元の産業を地元で育てる

平成22年、私たちは仙台市よりインキュベーションマネジメント事業を受託し、BDC一つ目の柱となる「インキュベーションセンターFLight」を団地内に立ち上げました。創業間もない企業に入居スペースを低額で提供するとともに、マーケティング分野の専門家による定期ミーティング等、細やかな支援活動を行っています。また、FLightは組合員各社の人材育成という役割も担っており、多彩な研修を通じて各社の社員が互いに切磋琢磨する意識も生まれ始めています。
平成24年には「創業スクエア」運営事業を仙台市より受託。BDC二つ目の柱として、市街中心部の産業振興拠点施設にて事業をスタートしました。主に既存の中小企業を対象に、窓口相談や各種セミナーのほか、企業の悩みに応じてマーケッター等の専門家がチームを組むハンズオン型の「集中支援」を行っています。これまで課題解決に導いた事例はトータル50件近く。今後も他の産業支援機関や教育機関連携し、支援の輪を広げていければと考えています。
昨今、行政では民間の資金や能力を積極的に活用する動きが見られます。これを踏まえ、FLightは組合の共同事業として自主財源で運営を始め、また創業スクエアも将来的な自立を目指し組合会館へ移転。二本柱が揃ったことで、BDCはようやく始動することとなりました。マーケティング分野において東北地域はいまだ発展途上にあり、人材育成は急務です。BDCの整備は、私たちのマーケティング知識とセンスを磨くチャンスでもあります。悩みを抱える企業が六丁の目地区へ集まり、最終的に組合各社のビジネスにつなげるためにも、しっかりと機能させていきたいと思います。

地域のあらゆる産業を結ぶ要所として
新しいまちづくりにも着手

構想から約7年。FLight運営が始まった矢先に東日本大震災が起こるなどの困難もありましたが、組合員相互の協力で乗り越え、東西線開業の年にBDCの本格稼働が実現できました。同じ印刷をなりわいとしながらも、組合員各社はそれぞれに得意分野や独自のノウハウを持っています。また、強い結束力で互いに補完関係を築き、プランニングから物流までワンストップサービスの提供を可能にしている点も大きな特長といえます。各社がBDCと結びつき、どんな化学反応が起こるのか。新たな価値創造企業としての変革を大いに期待するところです。
また一方で、私たちは六丁の目駅前開発によるまちづくりにも乗り出しました。団地内に建設した復興公営住宅では幅広い世代の方々が新生活をスタートさせ、これまでとは違った風景が広がりつつあります。今後も社会貢献と健全な組合運営につながる事業を展開し、魅力あるまちづくりを進めていきたいですね。
「BDCを軸とした人・情報・相談が集まるまちづくり」は、民間組織による先進的なモデルケースとして多くの方々から高い評価をいただいています。しかし、私たちのチャレンジは始まったばかり。東西線開通により六丁の目エリアは、西の学術、中心部の商業、東の農・工業それぞれを結ぶ要所(ハブ)となるでしょう。その中で、私たち自身が“産業のハブ”として機能すれば、復興半ばにある仙台・宮城、そして東北発展の大きな原動力になるはずです。印刷業の未来のためにも今後さらなる変革に挑み、力強く前に進んでいきたいと思います。

東経連ビジネスセンターと連携して、「実践セッション」を実施。マーケティングデータを基に複数社がバイヤー向けリーフレットやパッケージ、ロゴなどを提案し、新商品のブランディングに貢献しています。

地下鉄東西線六丁の目駅に隣接する組合所有の土地について、今後高度利用を図るべく、構想を練っております。今後は時代の流れや地域ニーズ、そして都市全体の中での役割を考慮しながら計画を進めていきます。(提供:仙台市交通局)

東日本大震災における仙台市の復興事業の一環として、平成27年3月、10階建て115戸の復興公営住宅を竣工いたしました。復興支援という目的に加え、新たな住民が印刷団地各社に隣接して居住することにより、新たな取り組みやビジネス拠点としての「厚み」が出てくるものと期待しております。

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